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猫が自分のしっぽや毛布をちゅぱちゅぱ吸うのはなぜ?「吸い癖」の理由と見守り方を専門家の情報で解説

先に結論を言うと、猫が自分のしっぽや毛布をちゅぱちゅぱ吸う「吸い癖」の多くは、子猫のころに母猫のお乳を吸っていたときのなごりで、それだけなら過度に心配しなくてよいことが多いと言われています。ただし、吸ったものを飲み込んでしまう場合や、しっぽの毛が薄くなるほど続く場合は話が別です。

うっとりした顔でしっぽの先をくわえ、前足でふみふみしながら吸い続ける姿はとても愛らしいものですが、「どうしてこんなことをするの?」「やめさせたほうがいいの?」と気になる飼い主さんもいるのではないでしょうか。この記事では、研究論文や海外の獣医療機関の情報をもとに、吸い癖の理由と見守り方を整理します。

そもそも「吸い癖」とはどんな行動?

猫が毛布やセーター、タオル、ぬいぐるみ、飼い主の服や髪、さらには自分や同居猫のしっぽなどを口に含んで吸う行動は、英語で「ウールサッキング(wool sucking)」と呼ばれています。毛糸製品が対象になりやすいことからこの名前がありますが、実際には柔らかい布全般が対象になるとされています。

吸いながら前足で布を押す「ふみふみ(ニーディング)」やのどを鳴らす様子が一緒に見られることも多く、これは子猫が母猫のお乳を飲むときの動きとよく似ています。そのため、吸い癖は授乳期の行動が大人になっても残ったもの、あるいは安心するための自己なだめ行動と考えられています。

獣医学の情報サイトWikiVetでは、子猫の吸い癖は多くの場合、生後6か月ごろまでにおさまると紹介されています。一方で、米国の動物病院グループVCAは、数年でやめる猫もいれば、一生続く猫もいると説明しています。

専門家・研究ではどう考えられている?

離乳の時期との関係

フィンランドのヘルシンキ大学の研究チーム(Ahola氏ら、2017年、Scientific Reports誌)は、40品種・5,726頭の飼い猫について飼い主へのアンケートを分析し、母猫から離された時期と行動の関係を調べました。その結果、離乳時期はウールサッキングの起こりやすさと関連しており、早く母猫から離された猫ほど攻撃的な行動や常同行動(同じ行動を繰り返す)が見られやすい傾向があったと報告されています。

研究チームは、推奨される離乳時期を現在より遅い14週齢ごろまで引き上げることを提案しています。ただし、これはアンケートに基づく調査で、早期離乳が直接の原因だと証明したものではない点も、論文の中で断られています。

猫種や遺伝の影響

VCAによると、布を吸ったりかじったりする行動はどの猫にも起こり得るものの、とくにバーミーズやシャム、オリエンタル系の血を引く猫で多いとされています。こうした品種で目立つことから、遺伝的な要因も関わっているのではないかという見方があります。

「吸う」から「食べる」へ進むことも

カナダのモントリオール大学の研究チーム(Demontigny-Bédard氏ら、2016年、Journal of Feline Medicine and Surgery誌)は、布や毛糸など食べ物でないものを口にする「異食(パイカ)」の猫を調べ、布を吸う行動と布を飲み込む行動との間に関連があったと報告しています。また、異食のある猫は、そうでない猫に比べて吐く頻度が高かったとされています。

窓辺で白いニットの毛布にのってくつろぐ黒猫

様子を見てよいケース・相談したほうがよいケース

専門家の情報を総合すると、ときどき毛布やしっぽを吸ってリラックスしている程度で、飲み込んだり体を傷つけたりしていなければ、無理にやめさせる必要はないと考えられています。一方、次のような場合は注意が必要とされています。

  • 吸っている布に穴があく、糸や布の切れ端が減っているなど、飲み込んでいる様子がある
  • しっぽの先の毛が薄くなる、皮膚が赤くなる・湿っている・傷になっている
  • 吐く回数が増えた、食欲が落ちた、便が出にくい(布や糸による腸閉塞のおそれ)
  • 1日の多くの時間を吸うことに費やし、呼んでも止められないほど没頭している
  • 大人になってから急に始まった、引っ越しなどの環境の変化のあとに増えた

VCAは、過剰な舐め・かじり・吸う行動の背景には消化器の病気などが隠れていることもあるため、まずは体の病気がないかを確認することが大切だとしています。気になる症状があれば早めにかかりつけの動物病院に相談しましょう。とくに、ひもや糸を飲み込んだおそれがあるときは、様子を見ずに受診することがすすめられています。

飼い主ができる工夫

VCAなどが紹介している、家庭でできる対策の例は次のとおりです。

  • 吸ってもよいものを用意する:飲み込みにくい丈夫な素材のおもちゃや、決まった1枚の毛布など「吸ってもよい代わりのもの」を用意します。古くてほつれた布や、毛足の長いふわふわの布は避けたほうがよいとされています。
  • 吸われて困るものはしまう:ニットや靴下、毛糸玉などは、出しっぱなしにしないようにします。
  • 遊びと刺激を増やす:毎日決まった時間に一緒に遊ぶ、知育トイ(フードを転がして取り出すおもちゃ)で食事に時間をかけさせる、おもちゃを数日おきに入れ替えるといった工夫で、退屈を減らすことがすすめられています。
  • 叱らない:吸い癖は不安を和らげるための行動であることも多く、叱ったり無理に引き離したりすると、かえってストレスが増えるおそれがあると言われています。
  • 食事について獣医師に相談する:VCAは、食物繊維の多いフードやデンタルフードが助けになる場合があると紹介しています。フードの変更はかかりつけの獣医師と相談しながら行いましょう。
  • 専門家に頼る:生活に支障が出るほど強い場合は、獣医行動診療の専門家に相談する方法もあります。VCAによると、強迫的な傾向がある場合は薬による治療が検討されることもあるとされています。

床に寝転んで羽根のおもちゃで遊ぶ猫

まとめ

猫がしっぽや毛布を吸うのは、子猫時代の授乳行動のなごりや、安心するための行動と考えられています。早い時期に母猫から離されたことや、猫種による遺伝的な傾向が関係しているという研究・見解もあります。ときどき吸ってくつろいでいるだけなら、温かく見守ってあげてよいことが多いでしょう。

ただし、布や糸を飲み込む、しっぽの皮膚を傷めている、吐く回数が増えたといったサインがあれば、早めにかかりつけの動物病院に相談しましょう。「吸ってもよいもの」を用意し、遊びの時間を増やしながら、猫が安心して過ごせる環境を整えてあげることが大切です。

参考: