「猫を飼いたい気持ちはあるけれど、一人暮らしで一日のほとんどは仕事で家にいない。猫のことを考えたら、やめたほうがいいのかな」――そんな投稿がXで大きな話題になり、280万回以上表示されました。返信欄には「うちも共働きだけど猫はのびのび暮らしている」「子猫のうちは大変だった」など、実際に猫と暮らす人たちの声が数多く寄せられています。
同じように悩んでいる人は多いのではないでしょうか。そこで今回は、獣医師や動物行動学の研究者、猫の保護団体などの見解をもとに、「日中留守がちな一人暮らしでも猫と暮らせるのか」を考えてみます。
健康な成猫なら「日中の留守番」はこなせると言われています
猫はもともと単独で狩りをする動物で、一日の多くを寝て過ごします。そのため、健康な成猫であれば、仕事で家を空ける8時間前後の留守番は問題なく過ごせることが多いと言われています。国内の解説記事でも、健康な成猫なら8〜12時間程度の留守番は一匹で乗り切れるという目安が紹介されています。
一方で、イギリスの猫保護団体Cats Protectionは、成猫を12時間ひとりにすることが「たまに」あるのは構わないものの、それが日常的になるのは避けるべきだとしています。長時間の不在が続く場合は、知人やキャットシッターに様子を見てもらうことが勧められています。
また、次のような猫は留守番できる時間がぐっと短くなるとされています。
- 子猫:生後4か月未満は4時間以上ひとりにするのは避けたほうがよいとされ、数時間おきの食事やお世話が必要と言われています。
- 高齢猫:腎臓の働きが落ちやすく、水分補給やトイレの状態をこまめに確認する必要があるとされています。
- 持病のある猫:投薬や体調の変化があるため、こまめな確認が必要と言われています。
日中ほぼ不在の一人暮らしなら、まずは「子猫より、性格の落ち着いた成猫を迎える」という選択肢を考えてみるのがよさそうです。保護猫団体では成猫の譲渡も多く、性格が分かったうえで迎えられるのもメリットと言われています。
「猫はクールだから平気」とは限らない――研究で分かってきたこと
「猫は飼い主がいなくても気にしない」というイメージがありますが、近年の研究では少し違う姿が見えてきています。
米オレゴン州立大学のクリスティン・ヴィターレ氏らの研究(2019年、学術誌Current Biologyに掲載)では、飼い主が部屋を出て戻ってきたときの猫の反応を調べました。その結果、子猫の約64%、成猫の約66%が、飼い主を「安心のよりどころ」として頼る安定した愛着を示したとされています。これは人間の赤ちゃんの割合(約65%)とほぼ同じで、「猫はそっけない」というのは思い込みにすぎないと研究者はコメントしています。
また、ブラジルの研究チームが2020年に学術誌PLOS ONEで発表した調査では、飼い主へのアンケートで223匹の猫のうち約13%に「分離に関連した問題行動」のサインが見られたと報告されています。主なサインは次のようなものでした。
- 家具などを壊す、ひっかく
- 過剰に鳴く
- トイレ以外の場所で排尿する
- 元気がない、無気力になる
この調査では、おもちゃで遊べる環境がないことや、家にほかの動物がいないことが、こうした問題と関連していたとされています。ただし、これは飼い主の回答にもとづく調査で、研究者自身も「行動観察による確認が必要」としています。「留守番が長い=必ず問題が起きる」というわけではなく、留守中の環境と、在宅中の関わり方が大切と考えられています。

留守がちな飼い主にできること
アメリカ猫臨床医協会(AAFP)と国際猫医学会(ISFM)は、猫が健やかに暮らすための環境の指針として「5つの柱」を示しています。安心できる隠れ場所、食事・水・トイレ・爪とぎ・寝床などの資源を複数かつ離して置くこと、遊びや狩りの欲求を満たす機会、飼い主との予測しやすく前向きな触れ合い、そして猫のにおいの感覚を尊重すること――これらは「あると望ましい」ではなく「欠かせないもの」とされています。
この考え方を、留守がちな一人暮らしに当てはめると、次のような工夫が挙げられます。
- 高い場所と隠れ場所をつくる:キャットタワーや棚、箱など、猫が安心して休める場所を用意する。
- 窓の外を眺められるようにする:鳥や人の動きを見ることが、留守中の刺激になると言われています。
- ひとりで遊べるおもちゃを置く:知育トイやフードを探すタイプのおもちゃは、狩りの欲求を満たすのに役立つとされています。
- 水とトイレは余裕をもって:水飲み場は複数、トイレは「猫の数+1」が目安と言われています。
- 帰宅後に一緒に遊ぶ時間をつくる:短い時間でも、毎日決まった時間に遊ぶことで、猫が安心しやすいと言われています。
- 見守りカメラや自動給餌器を活用する:様子を確認でき、食事の時間を一定に保てます。
- いざという時の頼り先を決めておく:残業や出張に備えて、キャットシッターや頼れる知人、かかりつけの動物病院を事前に探しておく。

「2匹で飼えば寂しくない」は本当?
先ほどの調査では「ほかの動物がいない」ことが問題行動と関連していたため、「2匹飼い」をすすめる声もあります。実際、きょうだい猫や相性のよい猫同士なら、一緒に遊んだりくっついて寝たりして、留守中の刺激になると言われています。
ただし、猫は本来単独で暮らす動物でもあり、相性の悪い猫同士ではかえってストレスになることもあると、獣医師団体は注意をよびかけています。2匹目を考えるなら、仲のよいきょうだい猫を一緒に迎える、保護団体に相性を相談するなど、慎重に進めるのがよいとされています。
まとめ:大事なのは「留守の長さ」より「暮らし方の工夫」
専門家の見解をまとめると、日中留守がちな一人暮らしでも、
- 健康な成猫を迎える
- 留守中も退屈しない環境を整える
- 在宅中にしっかり関わる
- 長時間の不在に備えて頼り先を確保する
といった点を押さえれば、猫と幸せに暮らしている人は多いと言われています。逆に、毎日12時間以上の不在が続く、急な出張が多いといった場合は、迎える前に一度立ち止まって考えるのもひとつの愛情です。
猫は15年以上生きることも珍しくありません。「今の暮らしで、この先もずっとお世話を続けられるか」を考えたうえで迎えることが大切です。また、留守番のあとにトイレの失敗や過剰な鳴き、元気がないといった変化が見られたら、早めにかかりつけの動物病院に相談しましょう。
参考:
- Oregon State University「Cats, like children and dogs, develop attachments to their caregivers, study shows」
- de Souza Machado D. et al. (2020) Identification of separation-related problems in domestic cats: A questionnaire survey. PLOS ONE
- AAFP「2013 AAFP/ISFM Environmental Needs Guidelines」
- Cats Protection「How long can you leave a cat alone?」








