朝起きた瞬間から、ごはんの前、トイレのあと、廊下を歩いているときまで、ずっと何かを話しかけてくる。「うちの猫、ちょっとおしゃべりすぎない?」と感じたことはありませんか?
猫の鳴く量には大きな個体差があり、よく鳴くこと自体は珍しくないと言われています。一方で、それまで静かだった猫の鳴き声が急に増えた場合は、体の不調が隠れていることもあるとされています。「性格のおしゃべり」と「気にしたほうがいい鳴き方」の違いを、研究や獣医師の情報から整理してみます。
そもそも猫はなぜ人に向かって鳴くのか
意外かもしれませんが、大人の猫同士が「ニャー」という典型的な鳴き声でやりとりすることは、あまり多くないと言われています。ノルウェー生命科学大学のブラースタッド氏は、ニャーはもともと子猫が母猫に向けて使う声で、人と暮らす猫はそれが人にも通じると知って使い続けているのではないか、という見方を紹介しています。スウェーデン・ルンド大学で猫の発声を研究するシェッツ氏も、大人になっても子猫らしい習性を残した猫が、人の注意を引くために鳴いていると説明しています。
鳴き声そのものが人との暮らしの中で変化した可能性を調べた研究もあります。2004年に発表されたコーネル大学のニカストロ氏の研究では、イエネコの鳴き声は近縁のリビアヤマネコ(アフリカヤマネコ)に比べて短く、高めで、人が聞いて心地よいと感じやすい傾向があったと報告されています。
つまり猫の「ニャー」は、人に用事を伝えるために磨かれてきた声とも考えられます。よく話しかけてくる猫は、飼い主を話の通じる相手だと思っているのかもしれません。
おしゃべりなのは生まれつき?それとも育て方?
どちらか一方というより、いくつかの要素が重なっていると考えられています。
- 猫種:シャムなど、よく鳴くことで知られる猫種があるとされています。
- 性格:シェッツ氏によると、活発で好奇心が強く外向的な猫はよく鳴き、落ち着いた猫はあまり鳴かない傾向があるそうです。
- 学習:鳴いたらごはんが出た、ドアが開いた、という経験を重ねると、猫は「どの声を出せば人が動くか」を覚えていくと言われています。
- 飼い主との会話:たくさん話しかけるほど猫も返事をするようになった、という飼い主の声は多いそうです。ただし、これは飼い主の実感としての報告です。
- 発情:避妊・去勢をしていない猫は発情に伴ってよく鳴くことがあり、ASPCA(米国動物虐待防止協会)は手術が最も有効としています。

「急に増えた」ときに考えたい病気
獣医師が注目するのは、鳴く量そのものよりも「変化」だと言われています。MSPCA-エンジェル動物病院のラトノフスキー獣医師は、若い猫の鳴き声はごはんや関心を求めるものが多い一方、高齢猫では病気が背景にある可能性が高くなると解説しています。挙げられている主な原因は次のとおりです。
- 甲状腺機能亢進症:高齢猫に多い病気で、アニコム損保の獣医師監修記事では10歳以上の猫の1割以上にみられる可能性があるとされています。よく食べるのに痩せる、水をたくさん飲む、落ち着きがないといった様子に加え、大きな声や夜鳴きがみられることがあるそうです。
- 高血圧:腎臓病のある猫で多く見つかるとされ、不快感が鳴き声につながるのではないかと考えられています。
- 聴覚・視覚の衰え:周りの様子がわかりにくくなることで不安を感じやすく、耳が遠くなると自分の声の大きさがわからず大声になることもあるとされています。
- 認知機能不全(猫の認知症):夜鳴き、昼夜逆転、目的のない徘徊、トイレの失敗などがみられることがあります。
- 痛み:関節炎や歯の病気など、痛みを伴う不調も鳴き声の増加につながることがあるとされています。

認知機能の低下がどのくらい起きるかは、調査によって数字に幅があります。ヒルズの解説では11〜15歳の約28%、15歳を超えると約50%に何らかの兆候がみられるという研究が紹介されており、ASPCAは11〜15歳の55%以上と見積もっています。また、認知機能不全と診断された鳴き声の多い猫37頭について飼い主に尋ねた2020年の調査では、鳴く理由として「混乱している」と「注目してほしい」がそれぞれ約4割で、複数の理由があると感じていた飼い主が6割以上でした。鳴く時間帯も夜・昼・その両方でほぼ3等分でした。小規模で飼い主の印象に基づく調査ですが、「認知症なら夜鳴き」とは言い切れないことがうかがえます。
なお、認知機能不全は一度の検査で確定できるものではなく、血液検査や血圧測定などでほかの病気を除外したうえで判断されると言われています。「もう歳だから」で片づけず、まず調べてもらうことが大切とされています。
飼い主ができること・注意点
- 急に増えたら、まず受診:ASPCAも最初のステップとして獣医師の診察を勧めています。体重、食欲、飲水量、トイレの変化もあわせて伝えましょう。
- いつ鳴くかを記録する:時間帯や場所、鳴く直前の出来事をメモしておくと、原因の手がかりになると言われています。
- 無視する前に確認する:水が空になっていないか、トイレに入れるか、部屋に閉じ込められていないかを見てあげましょう。ASPCAは、要求鳴きだと確信できるとき以外は無視しないよう勧めています。
- 要求鳴きには「静かなとき」に応える:鳴き止んだ瞬間に注目を与え、また鳴き始めたら離れる方法が紹介されています。ごはんの催促には、時間を決める、自動給餌器を使うといった方法もあります。
- 叱らない、たたかない:鳴き止む効果はあまりなく、飼い主を怖がるようになるおそれがあるとされています。
- 高齢猫には環境の工夫を:家具の配置を変えない、段差を減らす、入りやすい低いトイレを用意する、夜に明かりを残すといった工夫が勧められています。
まとめ
猫の「ニャー」は、人と暮らす中で育ってきたコミュニケーションだと考えられています。猫種や性格、経験によっておしゃべりの度合いは違うので、ずっと元気にしゃべっている猫なら、その子の個性であることも多そうです。
ただし、鳴き声が急に増えた、声が大きくなった、夜に鳴くようになった、といった変化は、体からのサインのこともあります。気になる症状があれば、早めにかかりつけの動物病院に相談しましょう。
参考:
- ASPCA「Meowing and Yowling」
- ASPCA「Older Cats with Behavior Problems」
- MSPCA-Angell「Why Is My Cat Meowing So Much?」(Mara Ratnofsky, DVM)
- Science Norway「Your cat meows mostly for you」
- Nicastro N. (2004) Journal of Comparative Psychology 118(3)
- Černá P. et al. (2020) Animals 10(6):1092
- アニコム損保「猫の甲状腺機能亢進症はどんな病気?治療法は?」
- ヒルズ「猫の認知症の症状チェックリスト」
